はじめに
合唱コンクール成功のカギは「選曲」にあり
歌い手の風彩花火(ふうさいはなび)です。
中学校生活の大きな行事の一つである「合唱コンクール」。
クラス全員で一つのハーモニーを作り上げる時間は、時にぶつかり合い、時に感動を分かち合う、かけがえのない経験になります。
そんな合唱コンクールにおいて、「どの曲を歌うか」は、コンクールの成否を左右する最も重要な要素と言っても過言ではありません。
「カッコいい曲だけど、男子の声が届かなくてスカスカになってしまった……」
「難易度が高すぎて、本番までに形にならなかった……」
残念ながら、選曲ミスによってクラスの士気が下がってしまうケースは少なくありません。逆に、自分たちのクラスのカラーにぴったりの曲に出会えれば、練習の密度は自然と上がり、本番では聴く人の心を揺さぶる最高の演奏ができるはずです。
この記事では、数多くの合唱曲の中から、今の時代の中学生にぜひ歌ってほしい名曲を厳選してご紹介します。
この記事で紹介する楽曲の分類について
膨大な合唱曲の中から効率よく候補を探せるよう、本記事では以下の4つの切り口で楽曲を分類して紹介していきます。
| 分類カテゴリ | 内容・目的 |
| 学年別(1年〜3年) | 各学年の発達段階や声域に合わせた、定番の推奨曲。 |
| 難易度別(★1〜★5) | 初心者でも挑戦しやすい曲から、金賞を狙うための超難関曲まで。 |
| ジャンル別 | 王道の合唱曲に加え、最新のJ-POP合唱編曲などもカバー。 |
| 雰囲気・テーマ別 | 「感動系」「疾走感」「メッセージ性重視」など、クラスの個性に合わせる。 |
まずは、自分のクラスが「どんな雰囲気を目指したいか?」をイメージしながら読み進めてみてください。
【学年別】定番&おすすめ合唱曲一覧
1年生。合唱の基礎を学ぶ!明るく親しみやすい曲
中学校に入学して初めて取り組む合唱コンクール。1年生の選曲で最も大切なのは、「無理なくきれいなハーモニーを作れるか」と「歌うことの楽しさを実感できるか」の2点です。
まだ合唱に慣れていない時期だからこそ、複雑な構成の曲よりも、メロディがキャッチーで言葉がストレートに届く曲が選ばれる傾向にあります。
1年生におすすめの楽曲ラインナップ
| 曲名 | 難易度 | 特徴・魅力 |
| Believe(ビリーブ) | ★☆☆☆☆ | 誰もが一度は聴いたことのある超定番曲。基礎を固めるのに最適。 |
| マイ バラード | ★★☆☆☆ | 「みんなで歌おう」という歌詞が1年生にぴったり。心の繋がりを感じる曲。 |
| この星に生まれて | ★★☆☆☆ | 明るくポップなリズムで、クラス全体の雰囲気がパッと明るくなる。 |
| 明日という日が | ★★★☆☆ | 希望に満ちた歌詞。シンプルながらも感動的な盛り上がりを作れる。 |
| 大切なもの | ★★★☆☆ | 卒業式でも歌われる名曲。切ないメロディが心に響き、表現力を磨ける。 |
ピックアップ解説。1年生ならこの曲!
迷ったらこれ!『マイ バラード』
合唱のスタンダード中のスタンダードです。メロディが非常に美しく、初めてパート別練習をする生徒たちにとっても「自分のパートがどこを歌っているか」を把握しやすい親切な設計になっています。ラストのサビでハーモニーが重なった時の快感は、1年生に「合唱って気持ちいい!」と思わせる魔法の力を持っています。
元気なクラスなら『この星に生まれて』
「しっとり歌うのは照れくさい」という男子が多いクラスには、この曲がおすすめです。リズムが軽快で、歌っているうちに自然と体が動くような楽しさがあります。サビの盛り上がりが作りやすく、クラスの一体感を出すのに最適な一曲です。
1年生の選曲アドバイス。男子の「変声期」を味方につけよう
1年生の男子は、ちょうど声変わり(変声期)の真っ最中の生徒が多い時期です。高い声が出にくい、あるいは声が不安定で出しにくいという悩みを抱えがち。
選曲の際は、「テノール(男声パート)の音域が広すぎないか」「低音でもしっかり響かせられる旋律か」を音楽の先生と一緒に確認しましょう。無理に高い声を出させるのではなく、今の時期にしか出せない「深みのある声」を活かせる曲を選ぶのが、金賞への近道です。
2年生。表現力が広がる!ハーモニーを楽しむ曲
1年生で合唱の基礎を学んだ後は、いよいよ「表現力」が問われるステージへ。2年生の選曲では、単に音をなぞるだけでなく、曲の背景にある物語をどう伝えるかという深みが重要になります。
リズムが複雑な曲や、転調(途中で曲の雰囲気がガラッと変わる)がある曲に挑戦することで、クラスの団結力がさらに試される時期でもあります。
2年生におすすめの楽曲ラインナップ
| 曲名 | 難易度 | 特徴・魅力 |
| HEIWAの鐘 | ★★★☆☆ | 沖縄の風を感じる力強いリズム。男子の力強さを引き出すならこの曲。 |
| 時の旅人 | ★★★★☆ | 過去・現在・未来を描く壮大なドラマ。曲調の変化が激しく、歌い甲斐抜群。 |
| 心の瞳 | ★★★☆☆ | 坂本九さんの名曲。歌詞の意味を噛み締めて歌うことで、聴衆の涙を誘う。 |
| 輝くために | ★★★☆☆ | 前向きなメッセージと、爽やかなメロディが2年生の若々しさにマッチ。 |
| 君と歩こう | ★★★★☆ | 繊細なハーモニーが求められる。クラスの歌唱レベルを一段上げたい時に。 |
ピックアップ解説:2年生ならこの曲!
圧倒的なエネルギー!『HEIWAの鐘』
2年生の定番中の定番。冒頭のインパクトから、サビの「ラララ……」という大合唱まで、クラス全員のエネルギーをぶつけられる一曲です。リズムを合わせるのが少し難しいですが、ピタッと揃った時の爽快感は格別。特に男子パートの低音が響くと、最高にかっこよく決まります。
物語を歌い上げる『時の旅人』
序盤の静かなメロディから、中盤の激しい展開、そしてラストの壮大な盛り上がりまで、まるで一本の映画を見ているような構成の曲です。パートごとの掛け合いが多く、お互いの声を聴く力が試されます。「自分たちは今、どの時代を旅しているのか?」をクラスで話し合いながら作り上げるのが成功のコツです。
2年生の選曲アドバイス。「中だるみ」を吹き飛ばす挑戦を
2年生は学校生活にも慣れ、時として「中だるみ」が懸念される時期でもあります。だからこそ、少し背伸びをした難易度の高い曲を選ぶのがおすすめです。
「自分たちには少し難しいかも?」と思える曲にクラス全員で向き合うことで、合唱コンクールを機にクラスの絆がぐっと深まります。また、2年生でしっかりとした基礎体力をつけておくことが、翌年の3年生での「大地讃頌」や「河口」といった超難関曲への架け橋になります。
3年生。集大成!圧倒的な感動を呼ぶ難関曲
3年生は、中学校生活の集大成。声変わりを終えた男子の厚みのある低音と、女子の透き通るようなソプラノが完全に調和し、「大人の合唱」へと進化する時期です。
テクニックはもちろんですが、歌詞に込められた深いメッセージを自分たちなりに解釈し、聴き手の魂を揺さぶるような選曲が求められます。
3年生にとっての合唱コンクールは、単なる行事ではなく、クラスの絆を証明する最後の舞台です。選ばれる曲も、高度なハーモニーや複雑なリズム、そして深い人生観を歌ったものが多くなります。
「金賞を狙いたい」「聴いている人を泣かせたい」……そんな熱い想いに応える、圧倒的な存在感を持つ楽曲を揃えました。
3年生におすすめの楽曲ラインナップ
| 曲名 | 難易度 | 特徴・魅力 |
| 大地讃頌 | ★★★★★ | 合唱界の「王道中の王道」。壮大なスケールで大地への感謝を歌う。 |
| 河口 | ★★★★★ | 難易度は最高クラス。荒々しくも美しい旋律で、圧倒的な実力を見せつける。 |
| 信じる | ★★★★☆ | 谷川俊太郎の詩。現代的な響きと深いメッセージが、聴く人の心に深く刺さる。 |
| 正解(RADWIMPS) | ★★★★☆ | 卒業式の定番になりつつある最新曲。18歳を目前にした揺れる心を描く。 |
| 証(flumpool) | ★★★★☆ | 仲間との絆と別れを歌った人気曲。J-POPらしいエモーショナルな展開。 |
ピックアップ解説。3年生ならこの曲!
合唱の最高峰に挑む『河口』
「筑後川」という組曲の終曲であり、3年生の合唱コンクールでこの曲が流れると、会場の空気が一変します。ピアノ伴奏の激しさ、力強い男声、それに応える女声の掛け合い。非常に高い歌唱技術が求められますが、完璧に歌いこなせば、文句なしの「金賞候補」筆頭です。
今の世代の等身大を歌う『正解』
もともとはRADWIMPSが18歳の若者たちのために作った曲ですが、今や中学生の合唱コンクールでも絶大な人気を誇ります。「あの日僕らが選んだ答えは、正解だったのか?」という問いかけは、進路に悩む3年生の心に強く響きます。感情を乗せやすく、ドラマチックな構成が感動を呼びます。
3年生の選曲アドバイス。「自分たちの物語」を歌に乗せて
3年生の選曲で最も大切なのは、「その曲が、今の自分たちに合っているか?」という納得感です。
どんなに難しい曲を完璧に歌えても、心がこもっていなければ聴衆には届きません。逆に、技術的に少し背伸びをしている曲であっても、3年間の思い出や葛藤を歌詞に重ね合わせることで、技術を超えた「奇跡の演奏」が生まれることがあります。
「このメンバーで、この歌詞を伝えたい」と思える一曲を、クラス全員でとことん話し合って決めてください。
【ジャンル別】今歌いたい人気曲リスト
クラスの個性を出すためには、曲の「ジャンル」選びも重要です。最近では、テレビやSNSで耳にするヒット曲を合唱で歌うことも一般的になりました。一方で、合唱のために書き下ろされた専門曲には、独特の美しい響きと一体感があります。
心に響く「J-POP・合唱編曲」
現代の中学生にとって、等身大の言葉で綴られたJ-POPは感情移入しやすく、高い熱量で歌えるのが魅力です。
| 曲名 | アーティスト | 魅力・ポイント |
| 正解 | RADWIMPS | 「答えのない問い」に向き合う歌詞が、進路に悩む中学生の心に深く刺さる最新の定番曲。 |
| 群青 | YOASOBI | 合唱が重要なパートを担う原曲を活かし、クラス全員で「合唱の楽しさ」を爆発させられる一曲。 |
| 僕のこと | Mrs. GREEN APPLE | 圧倒的な肯定感。難しい高音域が多いですが、歌い切った時の達成感は他の追随を許しません。 |
| Chessboard | Official髭男dism | NHK全国学校音楽コンクール(Nコン)の課題曲にもなった名曲。人生をチェス盤に例えた深い歌詞が魅力。 |
| 水平線 | back number | 悲しみや葛藤に寄り添う温かいメロディ。優しく語りかけるような合唱に仕上がります。 |
時代を超えて愛される「不朽の名曲」
長年歌い継がれている曲には、合唱としての「完成度」の高さがあります。親世代も知っていることが多く、聴き手の年齢を問わず感動を与えられるのが強みです。
- COSMOS(コスモス)
- 宇宙の壮大さと生命の尊さを歌った、1・2年生に絶大な人気を誇る曲。サビの広がりが非常に美しく、澄んだ歌声が映えます。
- 心の瞳(坂本九)
- 「大切なものは目に見えない」という愛の歌。しっとりとしたバラードですが、終盤の力強い盛り上がりは圧巻です。
- 時の旅人
- 「合唱をやっている!」という実感を最も味わえるドラマチックな曲。ピアノ伴奏の華やかさも相まって、コンクールでの映え方は抜群です。
- 信じる(谷川俊太郎 作詞)
- 「信じることに理由はいらない」という強いメッセージ。現代的な和音が多く、クラスの知的な表現力をアピールできます。
【コラム】J-POPを選ぶ際の注意点
J-POPの合唱アレンジは、原曲のイメージが強いため、つい「カラオケ」のように歌ってしまいがちです。
しかし、合唱コンクールで評価されるのは「パートごとの調和」や「言葉の明瞭さ」です。リズムが細かい曲も多いため、まずは言葉をはっきり発音する練習から始めるのが、カッコよく仕上げるコツですよ!
失敗しないための「選曲のポイント」
「かっこいいから」「去年、金賞のクラスが歌っていたから」という理由だけで決めてしまうと、練習が始まってから「こんなはずじゃなかった……」と後悔することになりかねません。
クラスにぴったりの「運命の一曲」を見極めるための、3つのチェックポイントをお伝えします。
① クラスの「声のバランス(男女比)」を把握する
合唱はチームスポーツに近いものがあります。自分たちのクラスの「戦力(声)」を冷静に分析しましょう。
- 男子の声量・音域: 変声期の真っ最中で高い声が出にくい男子が多いなら、テノールの音域が低めの曲を選びましょう。
- 女子の透明感: ソプラノに伸びやかな声の人が多ければ、高音が美しい『COSMOS』などの曲が映えます。
- 人数の偏り: 男子が極端に少ない場合は、男声パートがユニゾン(1つの旋律)になる「混声三部合唱」から選ぶのが鉄則です。
② 歌詞のメッセージに共感できるか?
技術と同じくらい大切なのが「表現力」です。自分たちが歌っていて「恥ずかしくなる」ような歌詞や、逆に「難解すぎて意味がわからない」歌詞では、感情が乗りません。
「この歌詞、今の自分たちの状況に似てない?」
「このフレーズ、卒業する時にみんなに伝えたいよね」
そんな風に、クラス全員が「自分たちの歌だ」と思えるストーリー性のある曲を選ぶと、練習への熱量が劇的に変わります。
③ 指揮者・伴奏者のレベルに合っているか?
ここが意外と見落とされがちなポイントです。特に「伴奏(ピアノ)」は合唱の屋台骨です。
- ピアノ伴奏の難易度: 『河口』や『春に』などの難関曲は、ピアノ伴奏も超絶技巧を要します。伴奏を引き受けてくれる生徒が、無理なく(かつ、かっこよく)弾ける範囲の曲か、楽譜を事前に見てもらうのがベストです。
- 指揮のしやすさ: リズムが複雑すぎる曲(変拍子など)は、指揮者が苦労します。クラス全員を引っ張っていけるテンポ感かどうかを確認しましょう。
【チェックリスト】その曲、本当に大丈夫?
選曲会議の最後に、この3つの質問をクラスで投げかけてみてください。
| チェック項目 | 判断の目安 |
| 完成図が見えるか? | 本番、自分たちがステージで堂々と歌っている姿が想像できる。 |
| 練習が楽しそうか? | 「難しすぎて嫌だ」ではなく「難しいけど歌えるようになりたい」と思える。 |
| クラスの個性と合っているか? | 元気なクラスならアップテンポ、落ち着いたクラスならしっとり系など。 |
選曲は、いわば「コンクールという航海の地図」を手に入れるようなものです。納得感のある選曲ができれば、練習の半分は成功したと言ってもいいでしょう!
【付録】練習効率を上げるための便利ツール
曲が決まったら、いよいよ練習開始です。限られた時間の中で金賞を目指すなら、ITツールやちょっとした工夫を味方につけましょう。
パート練習用音源の探し方
合唱の最初の壁は「自分の音を取る(覚える)」こと。最近では便利なサービスがたくさんあります。
- YouTubeの「パート別音源」: 曲名+「ソプラノ」「アルト」「テノール」で検索すると、そのパートだけを強調した音源が見つかります。
- 合唱練習用アプリ: 楽譜と連動して自分のパートを再生してくれるアプリも増えています。
- 録音の共有: 練習をスマホで録音し、クラスの共有ドライブやSNSグループでシェア。上手な部分とズレている部分を客観的に聴くのが上達への近道です。
歌詞解釈(楽曲分析)の進め方
音程が取れたら、次は「心」を込めるステップです。
| 手法 | 具体的なやり方 |
| 歌詞の書き出し | 大きな模造紙に歌詞を書き、全員で見える場所に掲示。 |
| キーワード分析 | 「この『青』はどんな青?」など、言葉のイメージを共有する。 |
| 物語づくり | その曲の主人公は誰で、どこにいるのか? クラス共通のイメージを持つ。 |
歌い手からのアドバイス
1フレーズごとに「ここは誰に、どんな気持ちで伝えたい?」を書き込んでみてください。全員のイメージが揃うと、声の「色」が劇的に変わりますよ。
おわりに
最高のハーモニーは「クラスの絆」から生まれる
ここまで、学年別の定番曲や選曲のコツを紹介してきましたが、最後に一つだけお伝えしたいことがあります。
合唱コンクールで最も価値があるのは、賞の色ではありません。「バラバラだったクラスが、一つの歌を通して一つになっていく過程」そのものです。
練習中、声が小さくてイライラしたり、男子と女子で意見がぶつかったりすることもあるでしょう。しかし、それを乗り越えて本番のステージで声を重ねた瞬間、今まで感じたことのない一体感を味わえるはずです。
あなたが選んだその一曲が、クラスにとって一生の宝物になることを心から願っています。


