音楽用語 rubatoの意味を歌い手が詳しく解説
歌い手の風彩花火(ふうさいはなび)です
今回は音楽用語 rubatoの意味を説明します
音楽用語の「rubato(ルバート)」とは、楽譜で使われる発想標語(演奏表現の指示)の一つで、「盗まれた時間」を意味し、テンポを自由に揺らして、表情豊かに演奏せよという指示です
正式には tempo rubato(テンポ・ルバート) と書かれることも多く、音楽に人間的な情感や自然な息遣いを与える重要な技法です
1. 語源と本来の意味
- イタリア語の「rubato」👉 動詞「rubare(盗む)」の過去分詞形で、「盗まれた」「奪われた」という意味
- 音楽的には「テンポの略奪(rubamento di tempo)」と呼ばれ、ある音やフレーズの時間を「盗んで」他の部分で「返す」という考え方に基づいています。つまり、全体の拍子や小節の長さを大きく崩さずに、局所的にテンポを伸ばしたり縮めたりする表現です
- 歴史的には18世紀初頭(P.F.トージの著書1723年頃)に「テンポの略奪」として説明され、バッハやモーツァルトの時代にも使われていました。当初は伴奏を厳格に保ちながらメロディだけを自由に揺らす形が主流でした
この用語は厳格なテンポ(in tempo)に対する自由な解釈を許すもので、ロマン派以降、特にショパンの作品で象徴的に使われるようになりました
2. 読み方と表記
- 読み方:ルバート(rubato)/テンポ・ルバート(tempo rubato)
- 表記:rubato または tempo rubato(フルスペル)。楽譜では新しいセクションや旋律的な部分に書かれ、適用範囲は指示の後から自然に終わるか、次の指示(例:a tempo)まで
- 関連表記
- rubato(略式)
- molto rubato 👉 非常に自由に揺らして
- poco rubato 👉 少しだけ自由に
3. 実際の演奏法(2つの主なタイプ)
rubatoには主に2つの解釈・使い方があります
- 伝統的な「時間盗用型」ルバート(古典派〜ショパン風)
- メロディ(右手など)を伸ばしたり急いだりして感情を強調
- 伴奏(左手など)は比較的厳格なテンポを保つ
- 借りたら返す 👉 遅くした分は後で速くして、全体の小節時間や曲の進行を大きく崩さない
- 例:重要な高音やフレーズの頂点を少し長めに弾き、その後を少し速めて調整
- 現代的な「全体テンポ揺らし型」ルバート(ロマン派以降・ジャズなど)
- 全体のテンポを自由に伸縮させる(少し速くしたり遅くしたり)
- 感情の波や息遣いを表現。ショパンやリストの作品で多用される
- 注意 👉 過度に使うと「リズムが崩れた」「甘ったるい」印象になるので、節度が重要
ポイント
rubatoは「自由」ですが、無秩序ではありません。メトロノームで厳格に練習した後で、少しずつ揺らすのが上達のコツ。全体の音楽構造やフレーズの歌い方を崩さないよう、「借りた時間は必ず返す」意識が伝統的な美しさの鍵です
4. 他の用語との比較・関係
- a tempo(ア・テンポ) 👉 元のテンポに戻せ。rubatoの後でよく登場し、自由な部分を締めくくります
- rit. / rall.(だんだん遅く) 👉 徐々に遅くする明確な変化。rubatoはより自由で局所的・即興的
- accel.(だんだん速く) 👉 徐々に速くする。rubatoは加速・減速を織り交ぜる
- ad libitum / a piacere(自由に) 👉 より広範な自由。rubatoは主にテンポの揺れに特化
- espressivo(表情豊かに)やdolce(甘く) 👉 rubatoと組み合わせやすく、感情表現を強化(例:rubato e dolce)
時代による違い
- 古典派(モーツァルトなど) 👉 伴奏を厳格に保ち、メロディだけをルバート
- ロマン派(ショパン) 👉 大胆で詩的なルバート。ショパンは「左手は時計のように、右手は歌うように」と形容される演奏だったと言われます
- 現代・ジャズ 👉 より自由でテンポ全体を揺らす場合も
5. 実際の演奏・練習での扱い方
- イメージ 👉 人間の息遣いや話し言葉のように、自然で生き生きとした表現。機械的な均等テンポでは出せない「歌心」や「情感の揺れ」を加えます。
- 練習のコツ
- まず厳格なテンポ(メトロノーム)で完璧に弾く
- 重要なフレーズの頂点や感情が高まる部分を少し伸ばしてみる
- 伸ばした分を後で速めて、全体のバランスを取る
- 録音を聞き比べ(特にショパンの名演)して、自分の解釈を調整
- 注意点 👉 初心者は控えめに。過剰なrubatoは「リズムが緩い」「感情過多」に聞こえやすい。作曲家・時代・曲の性格に合わせて使うのが理想です
まとめ
rubato = 「盗まれた時間」=テンポを自由に揺らして表情豊かに
「時間を盗んで返す」合理的な表現技法で、音楽に人間らしさと詩的な深みを加えます。特にロマン派のピアノ音楽で欠かせない要素です
実際に楽譜を見ながら聴くと感覚がつかみやすい有名曲例…
- ショパンのノクターンやワルツ(特に別れのワルツなど、旋律的な部分でrubatoが効果的)
- ショパンのマズルカやバラード
- リストやシューマンのロマン派作品
- ベートーヴェンの緩徐楽章でも控えめに使われる場合あり
これまで解説した用語(Allegro、rall.、dim.、meno mosso、molto、dolce、andante、maestoso、meno、accel.)と組み合わせると、
例えば「Andante rubato」(歩くように自由に揺らして)や「dolce e rubato」(甘く優しく、テンポを揺らして)で、より豊かな音楽表現ができるようになります
※個人の解釈として受け止めてください!




